アメリカの小学校ではどう英語を教えるのか?

地方分権が定着しているアメリカでは教育行政は各州政府に任されています。各州(さらに州内の学区や学校)が独自に教育の枠組みや基準を設定しているため、地域による学力差が大きく、不平等であることが長年問題になっていました。

これを解決するために2010年にオバマ政権によって作られたのが、全米共通の学習(カリキュラム)基準であるコモンコア(Common Core State Standards)です。コモンコアは2021年現在、全米50州のうち41州で導入されています。(コモンコアには強制力がなく、導入するか否かは各州政府の裁量によります。)


リーディング(読解力)の比重が高いコモンコア

移民の国アメリカは「英語を母国語としない子ども」の英語教育研究に長い歴史があります。膨大なエビデンスをベースに作られたコモンコア英語カリキュラムは、いわばアメリカの英語教育の集大成です。コモンコアを知ることは、英語を第二言語で学ぶ日本人にとっても大いに参考になるはずです。

コモンコアはキンダーガーテンから高校卒業までの13年間のカリキュラムで構成されています。英語は、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングの四技能に分けられ、それぞれの領域の習熟目標が明示されています。

英語カリキュラムで特筆すべきは「リーディング/読解力」の比重の高さです。「リーディング」はさらに「基礎力」「文学」「情報テキスト」の3つに分類され、それぞれの技能発達ついて「系統的・段階的カリキュラム」が組み立てられています。

コモンコアがリーディングに重点を置く理由は明快です。学校で指導する学習内容の「85%以上」は「Reading/読むこと」で成立しているからです。(出所:The Children’s Reading Foundation)教科書やテキストを正確に読み解く力は、すべての教科学習の土台となる基本スキルです。

リーディング力を育成するためにコモンコアでは、文字を習い始めるキンダーガーテンから高校卒業まで、読むテキストの難易度が段階的に増していくように習熟目標が学年別に設定されています。

例えば「文学リーディング」について、小学1年生では「大人の補助を受けながら散文や詩を読むことができる」小学2年生では「大人の補助を受けながら簡単な物語りを読むことができる」小学3年生では「自分の力で物語、詩、戯曲などを流暢に読むことができる」という要領です。


英語教育のスタートは単語を読む力の育成

アメリカの義務教育は子どもが5歳になる年からキンダーガーテンでスタートします。キンダーガーテンは、教科学習にスムーズに適応するための準備学年(0年生)という位置付けで、1年間のみです。公立学校ではキンダーガーテンは小学校に併設されているのが一般的です。

キンダーガーテンの英語カリキュラムは、アルファベットの音、三文字単語の読み方、サイトワーズ(頻出単語)の読み書き、音節やライミング(音韻)の認識など、英語を読む最小単位である単語学習に重点が置かれています。

具体的にはフォニックスでアルファベット26文字と音の関係を指導します。フォニックスは英語の「かな五十音」に該当するもので「A=ア」「B=ブ」「C=ク」というように、アルファベットの「音」を教える指導です。

日本では「A=エイ、B=ビー、C=シー」とアルファベットの「名前」を教えることが多いですが、これを覚えても簡単な三文字単語の「BED」すら読むことができません。「BED=ビーエイーディー」になってしまいます。しかしフォニックスを学ぶと「BED=ブエド」と正しく読めるようになります。

フォニックスと合わせて指導するのが、英語の頻出単語であるサイトワーズ(sight words)です。キンダーガーテンではサイトワーズを「最低50語」覚えることが目標です。ちなみにサイトワーズの頻出10単語は「the, to, and, a, I, you, it, in said, for」です。これらの単語を一目で読めて、正しく書けるように指導します。

サイトワーズを指導する理由は明快です。全ての英語(書き言葉)の「約50%は頻出上位100単語」のサイトワーズで、そして、全ての英語の「65〜70%は頻出上位300単語」のサイトワーズで構成されているからです。300単語のサイトワーズを覚えるだけで、理屈では、どんな本も70%読めるようになるのですから、子どもたちに教えない手はありません。


小学低学年は好きな本の多読で読書力を鍛える

小学低学年の焦点は「リーディングフルエンシーの確立」です。リーディングフルエンシーは「読みの流暢さ」という意味で、簡単に言えば、本やテキストをスラスラと早いスピードで読み解ける力です。

アメリカの小学校(低学年)には、日本のような教科書がありません。子どもたちは、自分の興味や関心に合った本を自由に読むことができます。好きな本をたくさん読むことで、読書習慣が身につき、リーディング力を効果的に育成することができます。

小学低学年のテキストとして活用されているのが「リーダーズ」と呼ばれるレベル分けされた本のシリーズです。リーダーズには英語を第二言語で学ぶ学習者向けのグレーデドリーダーズ(Graded Readers)と、英語を母国語とする子ども向けのレベルドリーダーズ(Leveled Readers)があります。

どちらも単語レベル、単語数、文法に制限をつけて、段階的に難易度が上がっていくように工夫されています。初歩のリーダーズは1ページに数行程度の英文で、各ページにイラストがついており、読む力が弱い子どもでも読み進められるように工夫されています。

Renaissance Learning社の調査(2020年)によると、アメリカの子どもは小学1年生〜3年生の3年間で平均160冊の本(リーダーズ)を読むそうです。このデータからも、アメリカの初等教育が簡単な本の「多読」を通して子どもたちのリーディング力を育成していることが分かります。

リーディングを鍛えれば自学自習で英語力を伸ばすことができる

当初はコモンコアを導入したものの、後に5つの州が離脱して独自のカリキュラムに移行するなど、アメリカの教育現場からは賛否両論のコモンコアですが、リーディング力の育成にフォーカスした英語カリキュラムは日本人学習者にとっても大いに参考になります。

日本人の英語力が向上しない原因に「英語を読む訓練が少ないこと」が考えられます。学校で行われている授業は、英語を文法ルールに則って和訳する文法訳読が中心です。コモンコアにあるような「英語を読むための段階的な指導」はほとんど取り入れられていません。

英語を読む訓練が足りないと、英語を正しいリズムとイントネーションで読むことができないため、理解が伴いづらくなります。英語は日本語に比べて抑揚が大きい言語ですが、その理由は、重要な単語を強調し、重要性が低い単語を弱く発音するルールがあるからです。英語のイントネーションには「話し手のメッセージを決める」働きがあるのです。

日本のように日常的に英語を話すことがない環境では、ネイティブとのコミュニケーションを中心とした英語学習は現実的ではありません。それよりもフォニックス、サイトワーズ、多読など、英語を読む力の育成に目を向けることで、子どもたちが「読書を通して」独学で英語を身につけることが可能になるはずです。


私が製作したオンラインフォニックスプログラムです。お子様の英語教育にご活用ください。

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船津徹公式サイト

ハワイ、LAのバイリンガルスクールTLC for Kids代表、船津徹です。バイリンガル教育、英語教育、ハワイ私立校受験、アメリカプレップスクール受験、ボーディングスクール受験、アメリカ大学受験など、世界で活躍できるグローバル人材育成をサポートしています。